昨今、「オーガニック」や「スローライフ」といった言葉がよく話題になっているように、
農業の国際的な流れも「有機農業・自然農法」に向かっています。
その原点にあるのは「自然尊重」、自然と人間の調和・共生です。
農業の持続的かつ安定的な発展のためには、自然と農業を切り離して考えることは不可能なのです。
そのため、世界的には自然を規範とした農業を広げる国が増えてきており、IFOAMなど、それを認証する
国際的な組織もできてきています。日本にも「有機JAS認証」があります。
有機JAS法で「無農薬で3年間・・・」という
規定がありますが、3年間でそれまでの農薬の影響は無くなるといえますか?
いい土づくりをされている農家さんであれば、
ガラッと変わる可能性がある。その反面、いい加減に土づくりをしているのであれば
「土」が変わらない。それは、収穫される作物に反映されるので見ればすぐにわかりますよ。
化成肥料を有機質肥料に変えただけでは「土」までは変わりません。
それでも「有機認証」を得ることはできるでしょうが、葉が光をあつめ、根っこが土から
養分を吸い上げ・・・といった、実ができる植物の生態を考え、
「土壌の生態系」をつくり上げることの重要性を理解していないようであれば、
「有機栽培の特徴」を完全に発揮できないという事になりますね。
では、その「有機栽培」の元となる「有機種子」についてお話を聞かせてください。
はい。ではまず、
「種子にはすべて遺伝子(DNA)がある」ということを理解してください。
環境、土壌に純化したDNAはとても重要で、農業にとって大切な土、生態系にあった
DNAを持った種子を「固定種」といい、土地に対しての定着性があります。
一方、「F1種」は土や生態系に順応するという性質ではないため、植物が自然から
受ける力を受け取ることは難しいといえるでしょう。だから、農薬や化学肥料を
使わないと栽培が難しいです。
しかし、収穫量や形・サイズの均一性などは評価
されるべきでしょうね。
有機の固定種であれば、有機農業にも向いていますし、「選抜採種」といって、
優れている種(おいしい、色がきれい、病気に強いなど)だけを選んで5〜10年(世代)
種をつないでいくことで、自分だけの「固定種」を作ることができます。
「その土地でしかできない、自家ブランドの野菜(たね)をつくる。」といった大きな
可能性を持っているのが「有機種子」といえるでしょう。
固定種はウイルスに弱いと聞いたのですが本当ですか?
確かに弱いかもしれませんが
「選抜採種」を繰り返すことにより、強い固定種に育てることができます。
5年ほどで、新しい土地に固定化しますが、「より良いものを作りたい」のであれば、10年は「選抜採種」を続ける必要が
あります。
10年もすれば、その土地にあった「独特の固定種」ができることでしょう。
F1種は種が取れないのですか?
取れたとしても、種子が「親帰り」してしまいます。
F1種は掛け合わせ種なので、どちらかの親に戻ると「どんな種」
ができるかは分かりません。そのため、毎年新しいF1種子を購入する必要があるのです。
なるほど。では「有機種子」を用いた「有機栽培」で気を付けるべきことはありますか?
ほとんどの方は、家族で「おいしくて安心な野菜」を食べたいという思いで有機栽培で
家庭菜園を始められていると思います。
そこでまずは農業で一番大切な
「土づくり」を徹底し、野菜は肥料ではなく土で育てるもの
だという意識を持ってほしいです。
土とは「微生物の塊」であり、
肥料とは「微生物を育てるためのエサ」です。土壌の「生態系」を維持し、育てる野菜に
合った土をつくることがよい作物を作るための基本になります。
最後に、家庭菜園で有機栽培にチャレンジされる方にメッセージをいただきました。
「少々、不細工な野菜だったとしても自分で育てた「ほんものの野菜」が食卓に並ぶのは最高の贅沢だといえます。
ただし、家庭菜園で有機栽培することの目的は、おいしくて安心な野菜を食べることだけではありません。
本当に大切なのは、土づくりから、野菜の栽培、調理、そして食べるところまで、家族みんなで一緒に取り組むことだと
思います。
家庭菜園を、単なる「野菜づくり」ではなく、「家庭づくり」につなげて欲しいですね。